ステンレスとはどんな金属?

“さびにくい鉄”として一般家庭のなかでも広く使われているステンレスですが、ステンレスの正体について、あまり語られることはありません。

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図1

実はステンレスは鉄(Fe)とクロム(Cr)の合金なのです。このクロムの含有率でサビの度合いが変わってきます。
図1をごらんください。

これはアメリカの半田園地帯でのステンレスの大気放置試験の結果です。クロムの含有率が12%を越えると全くと言っていいほどサビなくなります。この12%以上クロムを含んだ鉄のことをステンレスと呼んでいます。

クロムを含んでいるとなぜサビない?

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図2

普通の鉄を放置しておくと赤いサビができてきます。これは鉄の表面が酸化してできたものです。
図2をごらんください。

同じようにクロムを含んだステンレスもその表面に酸化皮膜ができてきます。実はこの表面皮膜が不動態皮膜といわれるサビに強い皮膜なのです。 この皮膜はアモルファス状(非晶質)の薄膜で、いわばガラスのように欠陥のない薄く均一な膜になっていて、膜の下地であるステンレスは直接外気と触れることはありません。 また、皮膜の中の90%がクロムで、不動態皮膜はクロム化合物になっているわけです。
これがサビない秘密です。

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生産量が一番多いSUS304

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図3

一般的な部品や製品で使われているのがSUS304といわれるステンレスです。
鉄と18%のクロムと8%のニッケルの合金です。ステンレスの中でも比較的鉄の性質に近く加工性がよいとされていて、しかもサビに強く、生産量も一番多いステンレスです。
これは、専門用語で「オーステナイトステンレス」(組織の状態で付いている名前)と言います。
図3をごらんください。

冷間加工(室温加工)することで、変形部分の組織状態が変化し「マルテンサイト」化する場合があります。この「マルテンサイト」化した部分は硬く丈夫になります。
つまり、加工の仕方で強度が上がったりするわけですが、逆に部分的に加工しにくくなるということも言えます。この現象を加工硬化と言います。反対にこの加工硬化を利用して 曲面や張り出し部を作ったりすることもできるわけです。
いずれにしても、ステンレスの加工は材料の知識と経験がなければ信頼性の高い部品加工はできません。

溶接する場合の注意点

割れに注意!

溶接では、融点以上に温度を上げ急冷することになりますので、「割れ」に対する注意が必要です。
マルテンサイトとは、ステンレスを製造する際にオーステナイトを急冷することによりできる、歪が多く硬いステンレスなのですが、特に低温割れに注意する必要があります。この場合、余熱、後熱などの熱処理工程が必要になります。

溶接では特に粒界腐食に注意!

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図4

ステンレスは“錆びない鉄”といいましたが、腐食が起こる場合があります。
溶接の過程で不動態皮膜が壊れ、結晶の境界面にクロムの炭化物ができてくると腐食が進行します。これを「粒界腐食」といいます。
図4をごらんください。

溶接の際、溶接部の外側の熱影響を受けた部分でこの「粒界腐食」が発生する場合があります。しかし、加工の際にこれを検査することは現実的ではなく、どの程度の加工であればストレスが最小で、腐食なく信頼性の高い溶接部品ができるかということは部品加工業者の経験によるところが大きいと言えます。

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切削加工が一番難しい!

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図5

ステンレスで一番苦手としているのが、この切削です。
単純に削り易さを比較しても、普通の鉄に比べて切削量が少いという結果がでています。
これは、ステンレスの熱伝導性の悪いことが影響しています。
図5をごらんください。

通常は、切削で発生した熱は、ワーク(製品側)か工具側に逃げていきますが、ステンレスの場合は製品側に逃げる熱の量が少なくなります。つまり、その熱が切削する側のチップ先端にたまり、温度が異常に上昇しチップの欠けを引き起こしたりします。
この対策として加工熱が発生し難い切削条件で加工することが必要になりまが、条件設定については各加工業者の「腕の見せ所」というところです。

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ひとつ、特に弊社の特徴を挙げるとすれば、大型の2次元、3次元のレーザー加工機導入した点です。レーザーはそのエネルギーの大きさから一見熱負荷が大きいと思われますが、 部品形状に限りなく近い形状まで、短時間で追い込むことにより、切削工程に要する時間を相当短くすることに成功しています。つまり、部品加工工程をレーザーの導入により圧縮し、完成までのトータル熱負荷を軽減しているのです。

ステンレス製部品の加工のカギ

弊社は、産業用機械設備や家庭用設備でステンレスが使われはじめてから、いち早くステンレス加工について研究しノウハウを蓄積して参りました。部品を図面の形状通り製作することはどこでも可能ですが、部品の信頼性に関しては、長年の経験とデータがあります。
安価な加工費で製作し初期の強度特性を満足したとしても、実際に5年、10年と使用し続けた場合部品のスペックが維持できるのか?そこが問題であると、高い意識をもって部品加工に携わっております。
つまり、どれだけ長く、どれだけ沢山のステンレスに触ったか?どれだけ複雑な形状を加工してきたか?それから得られるノウハウが部品の信頼性につながるカギだと認識しています。

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